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遺伝学的・微生物学的に統御された 健康なサル類の管理システムの構築 繁殖育成効率の向上を目指した技術の確立と 生殖補助技術の開発に関する研究 疾患モデルの開発および 解析に関する研究
疾患モデルの開発および
解析に関する研究
疾患モデル動物は難治性ヒト疾患の病態解明と診断・治療への応用に大きな役割を果たすものである。マウスなどの小型動物では既に遺伝子組換え技術の応用などにより、多くの疾患モデルが作出されている。一方で、ヒト特異的疾患を対象とした場合、マウスなどではその生理・代謝機能が必ずしもヒトを忠実に反映していない部分もあり、ヒトへの外挿面で十分な効果を得られないことも多く知られている。そこで、ヒトと最も近縁なサル類を用いて様々な疾患モデルの開発を行い、それらの解析結果を、ヒトへ外挿する必要がある。サル類を用いた疾患モデルの開発には当センターで維持されている種々の疾患を抽出・分類していくというリソースメリットを生かした自然発症疾患モデルが考えられる。また、高度に統御された感染実験施設を用いて病原体の実験的感染を行う。また、高度医科学研究設備を用いて病態を忠実に再現するなどの人為的に作出する疾患モデルがある。いずれの疾患モデルを用いても基礎・臨床医学的、分子生物学的手法などを用いて詳細に病態機序の解析を行うことにより、疾患の診断、予防、治療法に多くの知見をもたらすことが出来、医学の発展に寄与することが可能となる。ここでは、主な自然発生疾患および疾患モデルを紹介する。

自然発生疾患モデルザルの抽出
疾患モデルとしては、ヒトと最も近縁なサル類が最適であるが、ヒトと同様に非近交系であり個体差が存在するが故に自然発症疾患モデルの樹立は容易では無い。しかしながら、我々は25年にわたり世代交代が繰り返されてきたカニクイザル大規模繁殖コロニー内に種々の疾患が認められることを明らかにして来た。それら疾患の中には人と同様の加齢性や先天性に発症する疾患が存在する事も明らかにした。大規模繁殖コロニーにおいて多様な疾患群を抽出し、病態を詳細に解明することで、疾患の原因を明らかにし、さらには新規診断・治療法開発に重要な知見をもたらす事が期待される。


閉経後骨粗鬆症
ヒトと同様に月経周期を回帰しているカニクイザルは、閉経が確認されている数少ない実験動物である。そこで閉経以前から全身あるいは腰椎の骨量測定を継続し閉経後の骨量減少を実証するとともに骨量減少の予防法・治療法等の検討を加えている。


糖尿病
繁殖コロニーにおいてヒトの生活習慣病として重要な疾患であるII型糖尿病を発症する個体が認められる。糖尿病発症様式は肥満が先行し、図の様に数年に渡る慢性肥満の後、血糖値が上昇し、その後急激な体重減少が認められる。


心疾患
心疾患ではヒト同様の加齢に伴う弁膜疾患、虚血疾患等の他、種々の先天性疾患も抽出されている。図は検査を通じて得られた先天性心疾患である筋性部心室中隔欠損の超音波像。矢印部に心室中隔筋性部より右心内への乱流像が確認される。


加齢性神経変性
当センターのカニクイザルは、アルツハイマー病主病変である老人斑が老齢期において自然発症的に形成されることから、アルツハイマー病態のみならず神経系の加齢性変化に関する検索に極めて有用であると考えられている。


黄斑変性
眼底検査を通じて黄斑変性家系が抽出されている。正常の下図にくらべ、上図の眼底黄斑部には変性が起きており、視野の結像中心部が不明瞭に見える。発症しているカニクイザルでも同様に見えると考えられている。


子宮内膜症
繁殖コロニーであるという特性から子宮内膜症という疾患も多く抽出される。子宮内膜症は疼痛を主訴とし、不妊とも関連がある産科学的に重要な疾患である。図は腹腔内に増殖したチョコレート嚢胞とその超音波像。


高脂血症
厳密な栄養管理の行われるコロニー内においても血液中の脂質が増加するという家系性に維持されている事が判明している高脂血症モデル。図は高脂血症個体と採取された血液が乳び状の血漿を呈している様子。

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疾患モデルザルの開発
医薬技術が飛躍的な進歩を遂げた現在においても、新興感染症や加齢性疾患等の原因・病態は未だ不明な部分が多く、ワクチン開発をはじめとする感染症予防・治療法の確立や、疾患治療のための創薬技術の確立は急務となっている。これら感染症の原因病原体は、サル類にしか感染・発症しない場合が多く、また疾患の病態機序解明や治療法開発のための薬剤評価試験には動物モデルを用いた個体レベルでの検討が不可欠となる。当センターでは、ヒトと同じ霊長類に属するサル類を用いた動物疾患モデルの開発およびその応用を目指して研究活動を行っている。


C型肝炎
C型肝炎ウイルスはヒト・チンパンジーにしか感染しないと言われており、動物実験は困難であった。この点を克服すべく、サル類によるC型肝炎モデルの開発を推進している。図はモデル動物として期待されているタマリン。


血液疾患
血液疾患に対する移植治療、さらに再生医療や遺伝子治療への応用に必須である動物モデルとしてカニクイザルの造血幹細胞移植モデルを確立した。図は体重約3 kgのサルから体外循環により末梢血幹細胞を採取しているところ。


エイズ
後天性免疫不全症候群(AIDS)の新規治療法やワクチンの開発に向けて、サルAIDS発症モデルによる研究が進められている。図はAIDSの原因ウイルスであるヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)の電子顕微鏡写真。


プリオン病
ヒトのプリオン病モデルとしてリスザルを用いた実験系を樹立している。発症した動物では海馬を含む領域に海綿状変化を認め(A)、同免疫染色による感染性プリオン蛋白の検出も確認されている(B)。


パーキンソン病
MPTP長期投与によるカニクイザル慢性パーキンソンモデルを樹立している。図の様に動物は四肢の硬直が顕著に認められ、同じ姿勢のまま無表情で停止し、振戦が顕著な場合、餌を持つ手が震え、とりこぼす場合もある。

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