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遺伝学的・微生物学的に統御された 健康なサル類の管理システムの構築 繁殖育成効率の向上を目指した技術の確立と 生殖補助技術の開発に関する研究 疾患モデルの開発および 解析に関する研究
遺伝学的・微生物学的に統御された
健康なサル類の管理システムの構築
常時、約2,000頭のカニクイザルが動物倫理に十分配慮されて維持管理されている。そのうち約600頭で繁殖コロニーを形成し、年間約250頭の個体が生まれている。これらのサルはワクチンなどの国家検定やサル類特有の研究に用いられている。このような大規模室内繁殖コロニーは世界的に例を見ない。新規にサルを導入することなくコロニーを維持するために、設立時から遺伝学的統御がなされ、由来した生息地域間での交雑や親子などの近親での交配がないように維持管理されている。また、大規模コロニーを維持するために感染症の発生には十分な注意が払われ、種々の微生物についての検出方法が開発されている。現在、SPF(Specific Pathogen-free)ザルでコロニーが形成され、多くの研究に有効なサルとして評価されている。微生物学的に制御するということは、その個体に接するヒトの安全を確保することにもつながっている。コロニーの中心となっているサル種はカニクイザルであるが、様々な研究に対応するためにアフリカミドリザル、アカゲザル、ブタオザル、マーモセットなども維持管理されている。

遺伝学的統御
当センターのカニクイザルはフィリピン、インドネシア、マレーシア由来であり、生息地域間での交雑が無いように維持管理されている。これらは近交退化が生じないようにある一定の幅の遺伝的な差異を維持するような計画的な交配が実施されている。また、積極的な兄弟の作成、多世代にわたる家系の維持などにも配慮された交配システムが構築されている。このように遺伝学的に考慮された繁殖管理のもとで構築されたコロニーのサルは生息地域間の差を見出すという生物学的解析を可能にしている。医科学的には種々の遺伝性疾患をサルで解析することを可能にしており、世界的にも注目されたコロニーとなっている。
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微生物学的統御
有害な微生物感染のないSPFサルが、研究には必須である。サル類はヒトと共通の祖先を持つため類似点が多い。例えば赤痢菌は両者に同じ病気を引き起こす。一方、ヒトとサルの共通の祖先が持っていたウイルスが、固有の適応を遂げてきた例もある。サル類のBウイルスは、サル類では重篤な症状を引き起こさないが、ヒトに感染すると致死的である。1998年に最後の1頭が繁殖コロニーから排除された。一方、サル水痘ウイルス(SVV)は、ヒトには症状を起こさないが、初感染サルには致死的であるが、現在では排除された。その他、結核菌等もヒトとサルの間で相互感染する。すべてのサルを対象とした定期健康診断を行って危険な病原体がコロニーにいないことを確認している。
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家系管理
すべての個体は毎日ていねいに観察され、その観察データや維持管理に関わる交配、治療、さらに実験処理などのデータがコンピューターに記録される。このコンピュータシステムを用いることで近交化の回避や様々な解析が可能となっている。その一つとして家系管理情報は研究の解析のためにきわめて有用なものとなっている。たとえば黄斑変性、高脂血症、心疾患などの遺伝性疾患の家系解析が可能である。下の図は黄斑変性に関わる家系図を例として示したものである。また、MHC(主要組織適合遺伝子複合体)あるいはマイクロサテライトマーカーのような遺伝情報の解析は、家系管理が厳密に行われている当センターの個体を用いることで価値ある成果が得られている。
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エイジングファーム
社会に占める老人の割合が増加しており、長寿科学研究は重要な課題である。生活の質・健康を維持した状態で歳を取ることが理想となる。加齢に伴う免疫機能低下による感染症の罹患や認知能力の低下、あるいは生活習慣病の発症等の原因を探り、治療法を開発するために老齢ザルのコロニーが有効な研究資源となる。これらのコロニーをエイジングファームと称して維持・管理につとめ、老齢個体を用いた研究を実施している。左の写真は36才齢の個体。右は認知能力を評価するために独自に開発した迷路学習装置である。サルは迷路内のエサを指で動かしゴールへ導き食べることができる。このような装置を用いて老齢個体の解析を行っている。
老齢ザル 迷路学習装置
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