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霊長類医科学研究センター長

保富 康宏YASUTOMI Yasuhiro

国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所霊長類医科学研究センターは1978年に国立予防衛生研究所(現国立感染症研究所)のつくば支所(筑波医学実験用霊長類センター)として開設されました。2005年に独立行政法人医薬基盤研究所(現国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(以下「医薬健栄研」という。))に移管され、霊長類医科学研究センターとなりました。開設当初はウイルスの生ワクチン(ポリオ、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)、風疹、麻疹)の国家検定に使用する良質なカニクイザルを自家繁殖し、供給することを業務としていました。2005年に独立行政法人に移管されて以降は医薬健栄研の理念に沿い、霊長類研究資源の開発、保存、品質管理および供給を行い、霊長類を用いた創薬や新規治療に関わる研究、医療技術の開発、疾患モデルの作製を実施しており、自らも創薬研究を行っています。

当センターは医科学研究に特化した国内唯一の霊長類医科学研究センターであり、過去、現在において多くの医科学研究に貢献してきています。また、国際的にも諸外国の霊長類センターを凌駕する、また一線を画す特徴を持っているセンターとして国内外に周知されています。霊長類、特にセンターで自家繁殖しているカニクイザルは他の実験動物と異なり、ヒトに近い医学的、生物学的特徴を持ち、医科学研究には極めて有用な実験動物となっています。また、当センターでは発生工学や再生医療、遺伝子治療、脳神経系疾患、感染症等極めて多岐にわたり研究が行われています。そのために国内はもとより、世界的にも数多くの研究グループと共同研究を行い、成果を出しています。また、共同利用施設を保持、管理し、大学等の国内のアカデミアの研究をサポートしており、さらに企業とも積極的に研究を行っています。

この様に当センターは活動的に研究を推進していますが、当センターにおけるサル類を用いたすべての研究は、1964年のヘルシンキ宣言(医学研究の倫理的原則)に基づいています。すなわち、人間の尊厳を守るために医療・医薬品の開発は動物実験結果を十分に参考にして行われるべきだという基本原則です。また、動物実験を遂行するにあたり、社会的倫理を尊重すると同時に研究者は一般社会に対する説明責任を持つことを心懸けています。一方、研究者の独創性を失うことなく、3R提言(Reduction:使用動物数の削減、Replacement:代替法の利用、Refinement:実験の洗練、苦痛の軽減)、さらにResponsibility(研究者の責任)を加えた「4R」を十分に考慮し、国民の健康に貢献する成果の創出を目指しています。

今後も人類の健康、生命をはぐくむ研究に貢献できるように一層の努力を続ける所存ですので、皆様方のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

2021年1月

センター長

保富 康宏